商品・サービスを売り込むきっかけを作るテレアポは、多くの企業で実践されている営業方法です。電話を通したアプローチ方法は現代でも有効であり、実際に高い効果を引き出しているケースも多いです。その一方で、テレアポ業務は心身に負担がかかり、「病みやすい」と言われることもあります。

本記事では、テレアポがなぜ病みやすいのか、原因と対策を解説します。自社の従業員に大きな負担がかからないように、この機会にテレアポの詳細をぜひ確認してみてください。

テレアポは精神を病む？

テレアポは、「精神を病むことが多い」と言われることもあります。実際にテレアポの業務が辛いために、休職や退職を選択している人もいます。そのため会社はテレアポの実態を把握し、従業員の精神への影響を理解する必要があるでしょう。以下では、テレアポの実態について解説します。

テレアポは「失敗」が多い業務

テレアポが基本的に、失敗の方が多い業務です。何度も断られながら、それでも電話をかけ続けて、1度のアポイントを取るために奮闘します。そのためほかの業務よりも失敗の回数が増えてしまい、従業員の心に負担となるケースも多いです。業務において失敗はつきものであるため、過度に責任を感じる必要はありません。

しかし、従業員のなかには失敗したという事実がショックとなり、それが積み重なって精神を病むこともあります。

テレアポが原因で休職・退職するケースもある

先の解説通り、テレアポが原因となって休職・退職するケースも珍しくありません。「コールセンター白書2021」によると、新人オペレーターの離職率が31％以上と回答している企業は、4割近くにのぼります。電話受付や架電をメイン業務とするコールセンターでも、これだけ高い離職率となっています。

一般企業の場合、コールセンターよりもフォロー制度や研修制度が整っていないケースが多いため、従業員の負担がさらに大きくなることが予想されます。そういった現状が、テレアポで精神を病む人が多いと言われる背景につながっているのでしょう。

電話でのコミュニケーションが不慣れな従業員も増加している

昨今は電話を使ったコミュニケーションは減少し、代わりにチャットツールなどをメインに使うユーザーが増加傾向にあります。日常的な会話はチャットだけで済んでしまうため、わざわざ電話をかけるシチュエーションにあたることは少ないでしょう。

そのため最近は、電話でのコミュニケーションが不慣れな人も珍しくなくなっています。その流れはビジネスの現場にも影響していて、「電話を受けるのが怖い」「どうやって電話でコミュニケーションを取ればいいのかわからない」といった人も多いです。

その結果テレアポに苦手意識が生まれてしまい、精神を病むことが増えていると予想できます。

テレアポで病む主な理由

テレアポで精神が病みやすい背景には、さまざまな理由があります。具体的にどのような理由で病んでしまうのか知ることで、対策を考えやすくなるでしょう。以下では、テレアポで病む主な原因について解説します。

断られると「自分を否定されている」気持ちになる

先の解説通り、テレアポは失敗が多い業務です。簡単にアポイントを取ることはできないため、多くの失敗を繰り返していくプロセスが欠かせません。しかし、失敗がつきものだと頭では理解できていても、スムーズに割り切れない従業員も多いです。

アポを断られることで、「自分を否定された」と感じてしまい、結果的に精神を病むきっかけになる可能性もあるでしょう。従業員の考え方やメンタル次第では、テレアポの失敗がそのまま心身の負担になっているケースもあるため注意が必要です。

暴言やクレームを受けるケースも多い

テレアポでは、ときに暴言やクレームを受ける可能性があります。テレアポによる電話を快く思っていない企業は多いため、タイミングが悪いときにかけてしまうと、強い口調で断られることもあり得ます。

誠実な対応をするテレアポばかりではないため、何度もかかってくる営業に対して、つい怒りをぶつけてしまうケースも珍しくありません。そういった暴言やクレームは、従業員の心を傷つけて、精神を病むきっかけになり得ます。

モチベーションが低下しやすい

テレアポは電話をかけてコミュニケーションを取り、アポイントを獲得するのが基本的な業務内容です。同じ場所にいながら同じ作業を繰り返すことになるため、モチベーションが低下して仕事への意欲がなくなるケースも多いです。テレアポは電話相手と会話ができず、すぐに切られてしまうことも珍しくありません。

そのため「電話をかける」→「すぐに切られる」→「また電話をかける」といった単純作業になりやすく、モチベーションを上げるきっかけを作りづらいのも問題です。モチベーションが低下した状態が続くと、これも精神を病む原因となり、休職・退職につながる可能性があります。

ノルマなどプレッシャーも精神を追い込む

一般的にテレアポを担当する従業員には、ノルマが設定されます。「ノルマを達成できなかった」という事実が続くと、自分を追い込んで精神を病むきっかけになります。企業側はノルマが従業員のプレッシャーになることを考慮して、適切な目標値を設定する必要があります。

一方で、ノルマが緩すぎると業務に張り合いがなくなり、モチベーション低下を招くリスクがあります。適度に緊張感を保てるように、よい塩梅のノルマを設定できるように調整するのがポイントです。

ストレスを解消する暇がない

テレアポは1日の限られた時間を使って、アポイントを取る業務です。1日で電話をかけられる回数には限度があるため、わずかな時間も無駄にせずテレアポを続ける人も多いです。しかし、時間に追われて休みなく業務を続けていると、ストレスを解消する暇がなくなります。

先の通りテレアポでは暴言を受けるなど、強いストレスを感じる可能性もあります。そのため適度にストレスを発散できないと、気づかないうちに精神に負担がかかり、病む原因となってしまうでしょう。

テレアポの実施にはメンタルケアが重要

テレアポを効率良く実施するには、従業員に対するメンタルケアが重要です。適切なメンタルケアを行えれば、精神の負担を軽減して病む可能性を下げられます。以下では、テレアポにおけるメンタルケアの重要性について解説します。

メンタルケアをしないとさまざまなデメリットにつながる

そもそもメンタルケアは、テレアポに限らず多くの業務で役立つ方法です。従業員は仕事とプライベートの両方で、ときに強いストレスにさらされます。自分の力で解決できれば良いのですが、状況によっては個人の力ではどうしようもないケースもあるでしょう。

企業側はそういった従業員の精神状況を把握し、適宜メンタルケアを実施することが大切です。特にテレアポのように精神を病む可能性が高い業務をしている従業員に対しては、手厚いフォローを実施するのが重要です。

従業員ごとの精神的な負担を考慮する

従業員ごとに、精神的な負担の大きさは変わります。テレアポ業務に対して苦手意識がなく、失敗が続いても挫けずに電話をかけられる人もいます。一方で、些細なミスや相手の言葉も気になってしまい、精神的な負担を重く受け止めてしまう従業員も珍しくありません。

企業側はそういった従業員ごとの特性を考慮して、精神的な負担を軽減するための措置を取る必要があります。メンタルが病みやすい人をチェックして、積極的にケアを行うなど、状況に応じた臨機応変なフォローがポイントです。

テレアポで病む人をケアする方法

テレアポでは、精神のケアやフォローが重要です。しかし、実際にどのような方法でケアをすればいいのか判断できず、適切な対処ができないケースも多いです。そこで以下では、テレアポで病む人をケアするための方法について解説します。

テレアポは失敗が当たり前であることを伝える

テレアポは失敗が当たり前の業務ですが、従業員のなかにはその点を理解しきれていない人もいます。そういった人は失敗したことを強く後悔したり、自分が悪いと思い込んだりして、精神を病む可能性があります。そこでまずはテレアポの基本として、「失敗が前提である」ことを従業員に伝えます。

結果を出せる人も、多くの失敗を経験している点を強調し、「失敗＝悪いこと」という認識を取り払いましょう。

定期的にテレアポの内容を見直す機会を設ける

テレアポを担当している従業員のケアをするには、定期的に業務内容を見直す機会を設けるのもポイントです。市場や経済状況は常に変化しているため、以前は最適だったテレアポの方法が、現在では通用しなくなっているケースもあり得ます。

それに気づかないままテレアポを続けると、失敗の回数が増加して従業員がプレッシャーを感じる可能性が高まります。定期的に上司や担当者がテレアポの方法を見直し、状況に合わせてブラッシュアップするのも従業員を守る1つの方法です。

気持ちを切り替える時間を作る

テレアポでの精神負荷を抑えるには、業務中に気持ちを切り替える時間を作るのも重要です。先に解説したように、テレアポは同じ空間でひたすら電話をかけ続けることになるため、ストレスを発散する機会が少なくなります。失敗が続いて落ち込んだ状態でテレアポをしても、成果を出せない可能性が高いでしょう。

仮に成果が出ていなくても、きちんと休憩する時間を作り、気持ちを切り替えるように促すのもケアの一環です。特にノルマに追われている人は休憩を放棄するケースが多いため、リフレッシュする時間を作るようにアドバイスするのがポイントです。

失敗から学ぶ方法を教える

テレアポにおける失敗は、勉強の機会にもなり得ます。成果を出すには失敗をただ処理するのではなく、「そこから学ぶ方法」を理解することが重要です。失敗から常に何かを学ぶことができれば、前向きな思考になりやすく、テレアポで負担を感じる機会が減ります。

失敗が負担になっている従業員が多いときには、テレアポで学べることをまとめて、マニュアル化することも検討されます。テレアポが得意な従業員の意見などを参考に、失敗から学べる内容を可視化するのもポイントです。

プレッシャーの少ない環境づくりに力を入れる

テレアポでのケアを考える際には、そもそも従業員がプレッシャーを感じづらい環境づくりに力を入れるのもコツです。どれだけメンタルケアを充実させても、肝心の職場環境にストレスを感じる要素が多いと、精神を病む可能性が高いままとなります。

テレアポをきっかけに職場を見直して、プレッシャーとなる要素を取り除くのも1つの方法です。

テレアポで病んだ従業員をサポートする方法

テレアポが原因で病んでしまった従業員がいる場合、企業側から積極的にサポートする必要があります。以下では、テレアポで病んだ従業員をサポートする具体的な方法を解説します。

テレアポから距離を置かせる

テレアポが原因となって精神を病んでしまった従業員は、まず現在の業務から距離を置かせるのが重要です。仮に回復に向かっても、また精神を病んだ業務を担当することになると、復帰が難しくなる可能性があります。ひとまず落ち着きを取り戻せるように、テレアポ以外の業務を任せることから始めるのがポイントです。

そのうえでなぜテレアポで病んだしまったのか確認し、改善策を考えることがその後のフォローにつながります。

カウンセリングなどを勧める

従業員の精神状況が不安定な場合には、カウンセリングなどを勧めるのも効果的です。職場の上司や先輩では対処しきれない心の問題も、プロに任せることで解決の糸口が見つかる可能性があります。会社側でカウンセラーを用意するなど、話すきっかけを作る形でフォローするのも有効です。

カウンセリングは基本的に1度では終わらないため、長期的な視点でケアをする必要があります。そのため病んでしまった人の穴埋めができるように、一時的な人員補充などを計画するのもポイントです。

原因を探して繰り返さないように備える

精神が病んでしまった従業員が出たら、その原因を探り出して、繰り返し同じことが起きないようにケアする必要もあります。1人の従業員が精神を病んでしまった場合、そのままテレアポを継続していると、同じ症状に見舞われる人が出る可能性も考えられます。

人が減るとそれだけ残った人に負担が集中するため、さらに人が減る負の連鎖に陥るリスクもあるでしょう。そのため早めに原因を特定して対策を打ち出し、問題解決に力を入れる必要があります。できるなら精神を病んでしまった従業員に話を聞き、具体的な内容を教えてもらうのが最適です。

しかし、精神を病んでいる状況だと話をするだけでも辛いケースがあるため、無理に聞き出すことは避けましょう。

まとめ

テレアポは電話を使って自社の商品・サービスを紹介できる、有効な手法として広まっています。今後もテレアポでアポイントを取り、商談につなげていく流れは1つの業務として成立するでしょう。その一方で、テレアポは従業員の精神的な負担となることもあります。

ときには精神を病み、仕事ができない状態に陥る可能性もあるでしょう。テレアポを指導する企業や担当者は、改めてテレアポの問題を確認し、従業員の負担軽減に努めるのが大切です。この機会にテレアポによって精神を病む原因や解決方法を、具体的に確認してみてください。