2026/02/18
コールセンターの回線数の決め方|アーラン式を使った計算方法と最適化のコツ
「コールセンターを立ち上げるけど、回線は何本必要?」
「回線が足りなくて顧客を待たせてしまい、クレームになった」
「逆に回線を多く契約しすぎて、無駄なコストが発生している」
このような悩みを抱えている担当者の方は少なくありません。
回線数の設定は、「顧客満足度」と「コスト」の両方に直結する、非常に重要な判断です。
この記事では、統計学に基づいた「アーラン式」という計算方法から、クラウドPBXを使った柔軟な運用方法まで、プロの視点で分かりやすく解説します。
読み終える頃には、「自社に最適な回線数」が明確になり、無駄なコストを削減できるようになっているはずです。
1. 回線数が不足・過剰だとどうなる?よくある失敗事例
まず、回線数の設定ミスがどのような問題を引き起こすのか、具体例を見てみましょう。
失敗事例1:回線数が不足している場合
ある企業では、コスト削減のために回線数を5本に絞りました。しかし、ピーク時間帯(午前10時〜11時)に着信が集中し、以下の問題が発生しました。
- 顧客が「話し中」で繋がらず、何度もかけ直す羽目になる
- 「電話が繋がらない」というクレームがSNSで拡散される
- 競合他社に顧客が流れてしまう
結果として、顧客満足度の低下と機会損失という、取り返しのつかないダメージを受けました。
失敗事例2:回線数が過剰な場合
別の企業では、「念のため」と回線を20本契約しました。しかし、実際の同時着信数は平均3〜4件程度。
使わない回線の基本料金(月額数千円×16本)が毎月無駄に発生し、年間で数十万円のコストロスになりました。
【重要】適切な回線数は「勘」では決められません
「とりあえず10本」「他社と同じくらい」という曖昧な判断ではなく、統計学に基づいた計算が必要です。
2. アーラン式(Erlang B / C)とは?「回線数」と「席数」を分けて考える
コールセンターの設計でよく使われるのが「アーラン式」です。
ただし、回線数(同時通話チャネル/トランク)と席数(オペレーター数)は別物で、使う式も変わります。
- 回線数の設計: 「話し中(ブロッキング)」を許容する前提の設計では、呼損率を基に Erlang Bで必要チャネル数を見積もる
※一方、待ち呼(キュー)を受ける構成では、待ち呼もチャネルを占有し得るため、Erlang B単独では不足する場合があり、構成に合わせた見積りが必要です。 - 席数の設計: 待ち呼(キュー)を前提に「何秒以内に何%応答するか」を基に Erlang Cで必要要員数を見積もる
この記事では、まず「回線数=Erlang B」「席数=Erlang C」という整理で、迷わず設計できるように解説します。
【基礎知識】呼損率(こそんりつ)とは?
回線設計で避けて通れないのが「呼損率(ブロッキング確率)」です。
これは、「電話をかけたのに話し中でつながらない確率」のことです。
- 呼損率0.05(5%): (例)100回中5回つながらない想定。コストと到達性のバランスで採用されることがあります
- 呼損率0.01(1%): 100回中1回しか話し中にならない(緊急通報や重要窓口レベル)
- 呼損率0.1(10%): (例)100回中10回つながらない想定。窓口によっては許容しづらく、見直し対象になりやすい水準です
呼損率を低く設定すれば顧客満足度は上がりますが、必要な回線数が増え、コストも跳ね上がります。
「自社のサービスレベルとして、どこまで許容するか」を決めるのが、最初のステップです。
アーラン式で必要な3つのデータ
アーラン式を使うには、以下の3つのデータが必要です。
| データ項目 | 説明 | 取得方法 |
| 時間帯別の着信数 | 1時間あたりに何件の電話がかかってくるか | 過去の着信ログを分析(PBXやCTIシステムから取得) |
| 平均処理時間(AHT) | 1件あたりの対応に要する平均時間(通話+保留+後処理など) | CTI/ACDの統計(通話時間+ACW等)から算出 |
| 目標サービスレベル | 「〇秒以内に△%の着信に応答する」という目標値 | よく用いられる目標例として「20秒以内に80%応答」があります。適正値は業種・顧客期待・コストで調整します。 |
アーラン式の計算例
例えば、以下の条件でシミュレーションしてみましょう。
- ピーク時の着信数:1時間あたり100件
- 平均処理時間(AHT):3分(例:通話2分30秒+後処理30秒 など、通話以外も含めた平均)
- 目標サービスレベル:20秒以内に80%応答
この場合、アーラン式で計算すると、必要な席数(要員数)は約8〜9人となります。
(詳細な計算は専用のアーラン計算ツールを使用します)
※ここでの人数は「同時に稼働できる人数(同時対応人数)」の目安です。休憩・研修・離席・欠勤などを見込む場合は、シュリンケージ(上乗せ率)を加味して 配置人数(シフト人数)を増やす必要があります。
※回線数(同時通話チャネル数)は、席数と同数〜余裕を見て設定するケースが多いです。
※ACDで待ち呼を受ける構成では、待ち呼も回線(チャネル)を占有するため、席数と同数で足りない場合があります(構成・運用によって最適値は変わります)。
【注意】アーラン式は「インバウンド型」で特によく使われます
アウトバウンド型(発信業務)の場合、手動発信中心なら「同時通話する人数」を目安にします。
自動発信(プレディクティブダイヤル等)では「同時発信数(呼び出し中を含む)」も踏まえて余裕を見積もります。
回線がパンクした時の「あふれ呼」対策
どれだけ綿密に計算しても、予想外のピーク(バースト着信)で回線が埋まってしまうことはあります。
その際の「セーフティネット」をどう用意するかが重要です。
対策1:IVR(自動音声)で凌ぐ
「只今電話が大変混み合っております」というアナウンスを流し、一旦待ってもらいます。
ただし、待ち時間が長すぎると切断されてしまいます。
対策2:折り返し予約(コールバック)
「順番におつなぎするか、電話番号を入力して折り返しの連絡を待つか」を選択してもらいます。
顧客を拘束せず、オペレーターの手が空いたタイミングで架電できるため、双方にメリットがあります。
対策3:オーバーフロー転送
自社センターが満杯の時だけ、契約している外部のコールセンター代行会社に転送する手法です。
コストはかかりますが、機会損失(売上の取りこぼし)を最小限に防げます。
3. 現代のコールセンターが「クラウドPBX」で回線を最適化すべき理由
従来のオンプレミス型PBXでは、回線数を増やすために「物理的な工事」が必要でした。
しかし、クラウドPBXなら、管理画面から増減の手続きができ、オンプレに比べて短期間で回線数を調整しやすい傾向があります(反映速度はサービス・契約条件によります)。
クラウドPBXの3つのメリット
メリット1:繁忙期だけ回線を増やせる(具体的な運用例)
例えば、お中元シーズンのあるECサイトの事例を見てみましょう。
事例:ECサイトA社の回線運用ポートフォリオ
- 通常期(2月〜5月): 10回線契約(月額コスト最小化)
- 繁忙期(6月〜7月): 30回線に増強(管理画面から追加申請し、短期間で増強)
- セール日(単日): 50回線にスポット増強
オンプレミス型では増設に工事・契約変更が必要になりやすく、短期のスポット増強が難しいケースがあります。クラウド型なら「必要な時だけ」払えば良いため、年間コストを大幅に圧縮できます。
【モデルケース(架空)】オンプレミスの「工事待ち」で機会損失
逆に、オンプレミス型を使っていたB社では、テレビCMの反響で急遽回線を増やそうとしましたが、「回線増設工事に3週間かかります」と言われました。
結果、CM放送期間中に回線が間に合わず、大きな機会損失につながった可能性があります。
「スピード」が命のビジネスにおいて、クラウド型の即時性は強力な武器になります。
メリット2:初期費用が圧倒的に安い
オンプレミス型では、PBX主装置の購入と工事で数百万円かかります。
クラウド型なら、初期費用数万円、月額数千円〜でスタートできます。
メリット3:在宅勤務に対応できる
クラウド上にシステムがあるため、オペレーターが自宅からでも会社の電話番号で発着信できます。
物理的な回線に縛られないため、BCP(事業継続計画)の観点からも有利です。
弊社の『Dream Cloud PBX』は、管理画面から回線数(チャンネル数)を即座に変更可能です。
「まずは5回線で始めて、様子を見ながら増やす」というスモールスタートができます。
4. 通話料削減と回線運用の相乗効果
回線数を最適化しても、「通話料」が高ければ意味がありません。
特に、アウトバウンド型のコールセンターでは、最大コストは人件費になりやすい一方、見落とされやすく課金単位で増えやすいのが通話料です。
「3分課金」の罠
電話料金は、契約種別や宛先(市内/県外など)によって変動します。例としてNTT東日本の案内では、条件により 9.35円/3分(税込) や 8.8円/3分(税込) といった料金例が示されています(契約・宛先等で変動)。
しかし、テレアポの多くは「担当者不在で30秒以内に切れる」ことが多いです。
30秒で切れても3分分の料金が取られるため、年間で数百万円の無駄払いが発生する可能性があります。
解決策:秒課金サービスを使う
ドリームソリューションの『ドリームコールスーパー』は、1秒単位での課金を実現しています。
※同一宛先・同一条件で「課金単位」だけを比較した概算例です。実際の料金は契約・宛先・時間帯等で変動します。
例えば、一般的な料金体系として3分課金と秒課金を比較した場合(※料金は例示)、1日200件架電し、そのうち150件が30秒以内に切れる場合:
- 3分課金の場合(例:3分8.8円):150件 × 8.8円 = 1,320円/日 → 月間26,400円(20営業日)
- 秒課金の場合(例:1秒0.044円):150件 × 30秒 × 0.044円 = 198円/日 → 月間3,960円
月間2.2万円、年間26万円の削減が可能です。
5. まとめ:回線数の最適化で「顧客満足度」と「コスト削減」を両立する
回線数の設定は、単なる「数字の問題」ではありません。
適切な回線数を確保することで、顧客を待たせず、かつ無駄なコストを削減できます。
株式会社ドリームソリューションでは、アーラン式を使った回線数のシミュレーションから、クラウドPBXの導入、秒課金サービスによる通話料削減まで、トータルでサポートしています。
「まだ検討段階だけど、とりあえず話を聞いてみたい」という方も、お気軽にお問い合わせください。
プロが無料で診断いたします。