2024/09/03
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ppm分析とは?メリットや注意点についてわかりやすく解説!
企業が事業戦略を策定する際に用いる分析ツールの一つに「PPM分析」があります。PPM分析は、企業が保有する製品や事業のポートフォリオを評価し、資源の最適配分を目指すための方法です。市場成長率と市場シェアの2つの軸に基づき、各製品や事業の現在のポジションと将来性を分析することで、企業は効果的な資源配分と戦略的な意思決定を行うことができます。
本記事では、PPM分析とはなにか、メリット・デメリット、具体的な実施方法、そして実際の事例を通じて、その重要性と効果について詳しく解説します。
PPM分析とは?
PPM(Product Portfolio Management)分析は、企業が複数の製品や事業をどのように管理するかを決定するための方法です。この分析は、企業が成長と収益を最大化するために、各製品や事業の市場での位置づけと将来性を評価します。
具体的には、製品や事業を市場成長率と市場シェアの2つの軸に基づいて分類し、それぞれのポートフォリオの戦略を考察します。PPM分析はボストン・コンサルティング・グループ(BCG)によって1970年代に提唱され、そのシンプルさと有用性から広く採用されています。
PPM分析の4つのカテゴリー
PPM分析では、製品や事業を以下の4つのカテゴリーに分類します。これにより、各製品や事業の位置づけを明確にし、適切な戦略を立案することが可能になります。
花形(Star)
「花形」は、高い市場成長率と高い市場シェアを持つ製品や事業を指します。市場成長率とは、利益拡大の可能性が高いことを指し、高い市場シェア(市場占有率)は、顧客数が多いことを指します。
これらの製品は、市場での競争力が強く、成長ポテンシャルが大きいことが特徴です。しかし、持続的な成長を維持するためには、相応の投資が必要です。企業は、これらの製品に対して積極的な投資を行い、市場でのリーダーシップを確立することが求められます。
花形は企業のイノベーションの象徴とも言えます。これらの製品や事業は、しばしば企業のブランドイメージを強化し、顧客ロイヤルティを高める役割も果たします。例えば、テクノロジー企業における最新のスマートフォンやタブレットなどの製品は、花形としての特性を持ち、企業の先進性を示す大切な要素となっています。
金のなる木(Cash Cow)
「金のなる木」は、市場成長率は低いものの、高い市場シェアを持つ製品や事業を指します。これらの製品は、安定した収益をもたらし、企業の主要な収益源となります。新たな投資は必要最小限にとどめ、得られた収益を他の成長分野に再投資する戦略が一般的です。金のなる木は、企業の財務的安定を支える重要な要素であり、これにより企業はリスクを取りつつ新たな成長機会を追求することが可能となります。
金のなる木はまた、企業の市場での存在感を維持するための基盤ともなります。これらの製品は、しばしば長期的な顧客基盤を持ち、企業に対して安定したキャッシュフローを提供します。例えば、成熟市場における定番商品やサービスは、金のなる木として企業の安定性を支える役割を果たしています。
問題児(Problem Child)
「問題児」は、高い市場成長率を持つものの、市場シェアが低い製品や事業を指します。これらの製品は、成長ポテンシャルはあるものの、競争力に乏しいため、企業は将来的な投資を行うべきか慎重に判断する必要があります。適切な戦略を実行し、市場シェアを拡大することで「花形」に昇格する可能性がありますが、逆に失敗すれば資源の浪費となるリスクもあります。問題児に対する戦略は、その将来性とリソースの割り当て方次第で大きく異なります。
問題児を成功に導くためには、革新的なマーケティング戦略や新たな市場開拓が必要です。これには、ターゲット市場の再評価や新しい顧客セグメントの開拓、さらには製品の差別化戦略などが含まれます。例えば、新興市場での製品は、問題児としての特性を持ちながらも、適切な戦略によって市場シェアを拡大するチャンスがあります。
負け犬(Dog)
「負け犬」は、低い市場成長率と低い市場シェアを持つ製品や事業を指します。これらの製品は、企業にとって大きな負担となりがちです。収益性が低く、将来的な成長も見込めないため、撤退や資源の再配分を検討することが一般的です。負け犬カテゴリーの製品は、企業の資源を効率的に活用するために、可能な限り早期に戦略的な決断を下すことが求められます。
これには、製品ラインの縮小や市場からの撤退、あるいは製品の再定位などが含まれます。例えば、テクノロジーの進化に伴って陳腐化した製品は、負け犬として認識され、迅速な対応が求められるケースが多々あるものです。
PPM分析のメリット
PPM分析を活用することで、企業は複数のメリットを享受することができます。以下にその主なメリットを紹介します。
自社を客観視することができる
PPM分析は、企業が自社の製品や事業を客観的に評価するためのツールです。市場成長率と市場シェアという明確な基準を用いることで、感情的な判断を排除し、データに基づいた戦略的な意思決定が可能となります。これにより、企業は冷静かつ合理的に自社のポートフォリオを見直し、改善点を特定することができます。
また、自社のポートフォリオを客観視することで、企業はリスクと機会を正確に評価し、適切な戦略を策定することができます。これは、特に競争が激化する市場環境において、企業が持続的な成長を維持するために大切です。例えば、企業はPPM分析を通じて、市場の動向や顧客ニーズの変化をいち早く察知し、迅速な対応を行うことができます。
将来を見据えた投資ができる
PPM分析により、企業は各製品や事業の将来性を評価し、どこに資源を集中させるべきかを判断できます。これにより、将来の成長が期待される分野に対して効果的な投資を行うことができ、長期的な企業価値の向上を図ることができます。企業は、限られたリソースを最大限に活用し、競争力を維持・強化するための戦略を策定することが可能です。
将来を見据えた投資は、企業の持続的な成長と競争力の強化に不可欠です。PPM分析を通じて、企業は市場のトレンドや技術革新の動向を把握し、先手を打って戦略的な投資を行うことができます。これにより、企業は市場の変化に柔軟に対応し、新たな成長機会を掴むことができます。
PPM分析のデメリット・注意点
一方で、PPM分析にはいくつかのデメリットや注意点も存在します。これらを理解し、適切に対処することが重要です。
各事業の分析しかできない
PPM分析は、個々の製品や事業の評価には有効ですが、企業全体の戦略を考える際には限界があります。全体的なシナジーやリスク分散の観点からの評価が必要な場合、他の分析ツールとの併用が求められます。企業は、PPM分析だけでなく、SWOT分析やPEST分析など、複数のツールを組み合わせて総合的な戦略を策定するのが良いでしょう。
例えば、SWOT分析を通じて自社の強みや弱みを明確にし、PEST分析を通じて外部環境の変化を評価することで、より包括的な戦略を立案することが可能となります。
新規事業には向いていない
新規事業や市場に参入する段階では、PPM分析は有効ではありません。市場シェアや成長率のデータが不足しているため、適切な評価が難しいからです。この場合、他の市場調査やフィージビリティスタディを併用する必要があります。企業は、新規事業に対して柔軟かつ迅速に対応するための別のアプローチを検討することが大切です。
例えば、市場調査や顧客インタビューを通じて、新規事業の潜在的な需要や競争環境を評価することが大切です。また、フィージビリティスタディを通じて、新規事業の実行可能性や収益性を評価し、リスクを最小限に抑える戦略を立案することが求められます。
PPM分析のやり方
PPM分析を実施するための具体的なステップを以下に紹介します。
市場成長率の算出
市場成長率は、特定の市場の成長ポテンシャルを評価するための指標です。過去のデータを基に、年間の成長率を計算し、今後の市場の拡大可能性を評価します。市場成長率は、業界レポートや政府の統計データなどから取得し、過去数年間の平均成長率を基に算出します。
市場成長率を算出する際には、過去のデータだけでなく、将来の市場動向や技術革新の影響も考慮することが大切です。これにより、より正確な成長予測を行うことができ、戦略的な意思決定に役立てることができます。
マーケットシェアの算出
マーケットシェアは、自社製品や事業が市場全体で占める割合を示します。売上高や出荷量などのデータを用いて算出し、市場での競争力を評価します。マーケットシェアの計算には、自社および主要競合他社の売上データを収集し、全体市場規模に対する自社の割合を求めます。
マーケットシェアを正確に把握することで、企業は市場での競争力を評価し、競争優位性を維持するための戦略を策定することができます。また、競合他社との比較を通じて、自社の強みや弱みを明確にし、改善点を特定することが可能となります。
自社と競合他社の立ち位置を確認する
自社と競合他社の市場シェアや成長率を比較し、自社の強みや弱みを明確にします。これにより、競争環境を把握し、適切な戦略を立案することができます。競合分析を通じて、自社の製品やサービスが市場でどのように評価されているかを理解し、競争優位性を高めるための施策を講じます。また、競争環境の変化に迅速に対応するための柔軟な戦略を策定することも求められるものです。
PPM分析の事例
実際の企業の事例を通じて、PPM分析の具体的な適用方法とその効果を見ていきましょう。
ユニクロ
ユニクロは、ファッション業界においてPPM分析を活用し、各製品ラインの戦略を立案しています。花形製品としては高成長市場であるアジア地域での拡大を進め、金のなる木として安定した売上を誇る国内市場に対する戦略を最適化しています。例えば、ユニクロのヒートテックシリーズは高成長市場で成功を収め、同社のグローバル展開を支える重要な役割を果たしています。
ユニクロの成功事例は、PPM分析を通じて市場成長率と市場シェアを的確に評価し、適切な戦略を立案することで、持続的な成長を実現したことを示しています。同社は、競争が激しいファッション業界において、柔軟かつ戦略的なアプローチを採用し、グローバル市場での競争力を強化しています。
サントリー
サントリーは、飲料業界でのPPM分析を通じて、各製品カテゴリーの市場シェアと成長率を評価し、適切な資源配分を実現しています。問題児カテゴリーの新製品に対しては、積極的なマーケティング投資を行い、成長市場でのシェア拡大を目指しています。例えば、サントリーの健康志向飲料は、成長市場での競争力を強化し、新たな収益源として重要な位置を占めています。
サントリーの事例は、PPM分析を活用して市場動向を的確に把握し、成長ポテンシャルのある分野に対して積極的な投資を行うことで、競争優位性を確立したことを示しています。同社は、飲料業界の変化に柔軟に対応し、持続的な成長を実現するための戦略を効果的に実行しています。
任天堂
任天堂は、ゲーム業界でのPPM分析を用いて、各ゲームハードおよびソフトの市場ポジションを評価しています。負け犬カテゴリーの製品に対しては、迅速な撤退を決断し、花形カテゴリーの新製品開発に注力しています。例えば、任天堂のSwitchは、花形製品としての地位を確立し、同社の業績を大きく押し上げました。
任天堂の成功事例は、PPM分析を通じて市場の変化に迅速に対応し、戦略的な投資を行うことで、競争力を維持・強化したことを示しています。同社は、革新的な製品開発と市場分析を組み合わせることで、ゲーム業界において持続的な成長を実現しています。
まとめ
PPM分析は、企業が保有する製品や事業を戦略的に評価し、資源の最適配分を図るための有効なツールです。市場成長率と市場シェアの2つの軸を用いることで、企業は各製品や事業のポジションを明確にし、適切な戦略を立案することができます。しかし、その適用には限界や注意点も存在するため、他の分析手法と併用しながら総合的な戦略を策定することが大切です。具体的な事例を通じて、PPM分析の実践的な活用方法を理解し、自社の成長と競争力強化に役立ててください。